宮城県のワイン造りは、2011年の東日本大震災によって一度は途絶えてしまいました。
しかし、その逆境をきっかけに新たな挑戦者たちが立ち上がり、ゼロからの再出発を果たします。
今では、個性豊かなワイナリーが次々と誕生し、地域の食や文化と結びついた新しい魅力を発信しています。
本記事では、復興から生まれた宮城のワイナリーと、それぞれのユニークな取り組みをご紹介します。

震災直後:宮城県唯一のワイナリーが失われる
宮城県はもともと日本酒文化の印象が強い土地でしたが、実はワイン造りも行われていました。
県南の山元町には県内で唯一のワイナリーがありましたが、2011年3月の東日本大震災による津波で流され、事業継続が不可能に。
これによって、宮城県は「ワイナリーがひとつもない県」となってしまったのです。
復興を経て:新しいワイナリーが続々と誕生
「もう一度、宮城にワイン産業を根付かせたい」ー その思いを胸に立ち上がったのが、仙台市秋保(あきう)の毛利親房さんでした。
2015年に「秋保ワイナリー」を設立すると、栽培や醸造を学びたい人々を受け入れ、新たな担い手を育成。
そこから刺激を受けた人たちが自らワイナリーを立ち上げ、2025年現在では県内に8つのワイナリーが誕生しています。
かつてゼロになった宮城のワイン産業は、震災をきっかけにむしろ広がりを見せているのです。
宮城ワインたちのユニークなコンセプト
秋保ワイナリー(仙台市)
宮城復興のシンボル的存在として2015年に誕生した「秋保ワイナリー」。
温泉地・秋保に広がる畑でぶどうを栽培しながら、レストランやマルシェ、ワインセミナーなども開催。地域の観光・食文化をけん引する拠点となっています。
代表の毛利さんが提唱する「テロワージュ(テロワール×マリアージュ)」は、土地の恵みと食の調和を楽しむ新しい概念として、東北の食文化を発信するキーワードになっています。
やまもとワイナリー(山元町)
東北屈指のいちご産地・山元町で生まれた「やまもとワイナリー」は、いちご農園が手がけるユニークな存在。
「自然のいちごをそのまま感じられるワインを」という想いから、自社栽培のいちごを使い、無着色・無香料で醸造。
いちごの華やかな香りと爽やかな酸味を楽しめる「真実のいちごワイン」は、震災復興の象徴として注目されています。
宮城大学との共同開発も行われ、地域連携のモデルにもなっています。
南三陸ワイナリー(南三陸町)
「海の見えるワイナリー」として2020年にオープン。
海と山に囲まれた南三陸ならではの特徴を活かし、「海の幸と合うワイン」をテーマにしています。
特に注目なのが、牡蠣棚にワインを沈めて熟成させる「海中熟成ワイン」。
海の音や振動が熟成を進め、まろやかな味わいを生み出すと言われています。
地元食材を楽しめるレストランや、漁業・農業体験と組み合わせたツーリズムも魅力です。

了美ワイナリー(大和町)
県内最大規模の畑を持ち、赤白あわせて10品種以上のぶどうを栽培する「了美ワイナリー&ヴィンヤード」。
単にワインを造るだけでなく、若者のインターン受け入れや、障がいのある方の雇用など、地域社会の課題解決にも積極的に取り組んでいます。
敷地内にはレストランや宿泊施設もあり、サウナ付きのリトリート施設「Retreat了美 七ツ森」ではワインとともにゆったりとした時間を過ごせます。
まさに“地域の未来を支えるワイナリー”です。

まとめ
再び芽吹いた宮城のワイン産業。
震災でゼロになった宮城のワイン産業は、逆境をバネにして新たな広がりを見せています。
その背景には「もう一度、この地にワインを」という強い願いと、地域を未来につなげる挑戦者たちの努力があります。
宮城県が生んだワイナリーは、それぞれが個性的なコンセプトを持ち、地域の食や文化と結びつきながら発展中です。
ふるさと納税を通して、宮城ワインの挑戦を応援し、宮城のワインの魅力を味わってみてはいかがでしょうか。
参考サイト(敬称略)
日本酒だけじゃない! 波に乗る東北のワイナリー 震災復興も原動力(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/AST4R1V53T4ROXIE02GM.html
宮城のワイナリー紹介(1) 震災後に続々設立~盛り上がる宮城のワイン(東北・美酒と食のテロワージュ)
https://www.tohoku-bishu-shoku-tourism.jp/2671/
宮城のワイナリー紹介(2) 地域の想いと共に~盛り上がる宮城のワイン
https://www.tohoku-bishu-shoku-tourism.jp/2679/
Histry(了美ワイナリー)
https://ryomi-wine.jp/history
秋保ワイナリーの歴史(秋保ワイナリー)
https://akiuwinery.co.jp/pages/history-2
いちごのワイン(山元いちご農園)
https://www.yamamoto-ichigo.com/strawberry_wine.html
宮城大学×山元いちご農園、いちごワイン「愛苺」「苺夢」「苺香」販売中、7/4「山元いちご農園」岩佐社長が宮城大学を訪問、新たにポップラベルをリリース(宮城大学)
https://www.myu.ac.jp/research/news/2019-1/yamamoto-ichigo/
ワイン熟成は海中で、養殖カキと一緒に。南三陸の山と海が新たな逸品を育む(経済産業省 METI Journal)
https://journal.meti.go.jp/p/36237/